嘘か真か巷の噂


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<誰も語ろうとしない真実>

 真空管アンプ

  未だに、真空管アンプ?
 ほんのりと灯るヒーターが音にも暖かさを感じさせる?
 音質とは無縁でしょう。

 野暮な話、真空管アンプの信者の方にはSLファンに電車の優位性を説明するようなものですが、音質、製作のしやすさ等々はトランジスタアンプの比ではないのです。もし、本当に良い音質をお求めなら、トランジスタアンプを作って、ランプを飾りにつけた方が良いでしょう。

 ここでは、まず、真空管の構造、動作原理からお話し、スピーカを駆動するパワーアンプとしては、一般に負帰還が十分に掛けられず、内部で発生する歪を抑圧できない、スピーカを入力信号で十分制動できないことなどを述べましょう。幸いなのは、歪が真空管内部の空間電荷の挙動に基づくものであり、偶数次の高調波成分が主なので、極度に耳障りでないことだけなのです。
 

 三極管と五極管

 真空管は、陰極をヒーターで暖め、ここから放出される電子を負の電圧のグリッドの電界で抑制します。陰極とグリッドの間に溜まった電子の電荷とグリッドの電位で電界が形成され、グリッドを抜けた電子が陽極に引き寄せられる三極管を基本構造としています。
 陽極に負荷を接続すると、流れる電流で陽極の電位が変動するので、グリッド周りの電界も変動しますし、低い電圧では、グリッドを通過したばかりの遅い電子(空間電荷)の電界への影響も大きなものになります。ただ、これらは、真空管内部で発生する負帰還とみる見方もあります。

 これらを改善するために、グリッド近くの陽極側に電子加速用のグリッドを追加し、抑制グリッドを通過した電子に早く退場してもらいます。ただ、これだけですと、加速された電子が陽極に衝突して電子が叩き出され、電圧の高い加速用グリッドに逆流してしまいます。
 これを防ぐために、陽極と加速用グリッドの間に、叩き出された電子を陽極に押し戻す逆流防止用グリッドが追加されました。これが、五極管です。陽極からの負帰還が除去され、陰極・陽極間の電流電圧特性はトランジスタに類似しています。

 オ−ディオパワーアンプ

  真空中の電子群の運動をグリッドによる電界の変化でコントロールする。これが基本原理ですから、空間の電子の量、空間の電界分布が増幅の質を左右します。例えば、振動などによる電極間の空間変動は、すぐにノイズとなって現れます。また、電力増幅では一般に、電流を多く必要とすることから、三極管が用いられ、五極管を使用する場合には、高電圧で使用することに加え、三極管に近い動作範囲で使用するなどの対策が採られます。

 このように、スピーカ駆動用の電力出力用では、大きな増幅率が望みにくいばかりでなく、高電圧が必要となりますから、駆動するスピーカは高電圧タイプ(例えば、コンデンサ型)か、出力トランスを介して接続することになります。

出力トランスが必要不可欠

 出力トランスは、コイルですから、どんなに高価なものでもリラクタンス(L)成分を持ち、その磁気特性がスピーカとアンプの双方に影響を与えるため、スピーカ接続端からの負帰還を十分掛けられず、各部位で発生する歪の影響を除去することは勿論、スピーカの挙動(これによる電圧)も制御することが困難なのです。

 スピーカを入力信号に従ってガッチリドライブするのではなく、制動を効かせずゆるくドライブする、そんな考えもあるのでしょうが、手にしたいのは楽器ではなく、音響再生システムなのですから、前者の立場が勝ると思います。

 このため、各増幅段での歪を極力押さえるとともに、アンプの出力インピーダンスを下げる工夫が真空管アンプでは重視されました。出力インピーダンスとスピーカの抵抗比をダンピングファクタと呼びますが、このような指標が導入された背景でもあります。しかし、これには、限界があります。スピーカ接続端から安定した負帰還を入力側に十分施すことに勝るものはないのです。
 

SFBアンプでトランジスタ回路を学習し、更なる高みへ

 トランジスタアンプなら、アウトプットトランスレスにでき、回路内での歪を抑制し、スピーカをがっちりと制動することが可能なのです。真空管アンプの設計理念の良いところを踏襲しつつ、スピーカという変動する特性を持つ負荷に対して、安定した負帰還を施すために数々の工夫を施す、これがSFB(Stabilized Feed Back)アンプの設計理念です。

 SLファンのように真空管アンプに取り組まれるにしても、例えば、電源のノイズ対策、安定化へのトランジスタ活用など、是非、知識の幅を増やした上で取り組まれることを望む次第です。

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