トランジスタオーディオアンプの製作に向けて
キット作成中心の電子工作から、自身で設計し、製作する電子工作に取り組みませんか?この電子工作入門には、オーディオマニアも顔負けのメインアンプの自作から始めることをお勧めします。 しかし、ディスクリートトランジスタによるオーディオ用アンプについて、巷には、間違いだらけの設計知識が氾濫していますので、正しい知識を学びましょう。
トランジスタは、特性面から真空管と比較すると、増幅率が大きく、特性パラメータが変動します。これは、真空管の特性が電極の物理的な空間構造に依存しているのに対して、トランジスタは基本素材(シリコン)の結晶構造、不純物の分散状態と温度に依存していることに寄ります。 トランジスタは小さく、安価であるため、特性の不安定さを補うために多用して回路を複雑化する傾向があり、逆に発振トラブルに巻き込まれるケースが多いと言えます。 回路をシンプルにすることが、製作を容易にし、トラブルを回避する上で重要です。
そこで、設計・製作に入る前に、ハイグレードオーディオアンプとは何か、アンプに対する要件を見つめ直しましょう。 ・必要な音量を、ゆとりをもって再生できる ・耳障りな歪やノイズを付加しない
実にシンプルではありませんか?
なのに、回路好きの技術者達は、オーディオであることを忘れて、頑張りすぎるのです。
あなたは、FM放送は音が悪い、帯域が狭く、不快だと思いますか? あなたには、15kHz以上の音が聞こえますか? FM放送では、15kHz以上の音がカットされていることをご存知ですか? あなたの耳がどんなに良くても、30kHz以上は聞こえないと思います。 あなたには、50Hz以下の音が聞こえますか? あなたのスピーカは、50Hz以下の音を再生していると思いますか? オーディオ信号として意味の無い帯域を増幅することが良いことだと思いますか? 聞こえない信号を増幅することは、歪やノイズの元凶なのです。 頑張っている技術屋さんには申し訳ないのですが、極端に言えば、15kHzでは、方形波を再生できることは不要で、正弦波分が再生できれば十分なのです。直流まで再生してしまうことも、30kHz以上を再生してしまうことも、自慢どころか、ノイズの原因を作っていると言っているに過ぎないのです。フーリェ展開をご存知の方は、20kHz以上をカットすると10kHz方形波がどうなるか、ご理解できるものと思います。
これは、高級メインアンプの性能として表示されている再生帯域特性は、何の役にも立たないということを意味します。このような状況が、数十年も続いているというのは、嘆かわしいというしかありません。 モニタースピーカ、測定用マイク、モニター室などの条件を明確化、できれば標準化して、入力信号と測定信号との比較、聴感を加えた数値分析を表示するなど欲しいものです。 これで、少なくとも、10kHz方形波特性や100kHz以上の周波数に関する話題は皆無になるはずです。
「不必要に再生帯域を広げなくて良い。」 「聴ける範囲の信号を歪無くスピーカに伝える」 この2点を重視すれば、トランジスタアンプ回路の次の設計方針が見えて来ます。 ・特性の安定した範囲でトランジスタを動作させる。 ・負荷の特徴を考慮した再生を実現する。 このようなことを実現する、SFBアンプ(安定帰還アンプ)を実用新案登録しました。 では、具体的な教材で、設計技術を高めましょう。 SFB: Stabilized FeedBack
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