TOCは、「仕掛かり部品の氾濫、在庫過多、製造期間が長い、納期遅れ頻発、結果高コスト」からの脱却物語。在庫や処理待ち部品(仕掛かり在庫)の氾濫は、一部のワークセンター(部署)が必要以上に生産し、この生産により後続工程部署が過負荷状態に陥っていることが原因。内部ワークセンター(部署)での製造期間が長いのは、ほとんどの場合、部品不足による処理待ち時間に起因する。 不急の製造を規制して過負荷を脱出させ、部品不足による不必要な待ちを減らし、リードタイム(着手から完成までの製造期間)を最適化する。
ボトルネックでの待ちに着眼して「制御された待ち」を作る一方、各部署での部品待ちを削減(ジャストインタイム化)し、リードタイム最小化、スループットを最大化する。この実現への取り組み方法、振り返りによる継続的改善への取り組みを具体的に例示している。
効果的なスループット増大への取り組み方法
1 ボトルネック(改善対象)の探し方(スループットを制する部署を特定する) ワークセンター(部署)での処理待ちの状況を調査、待ち量の大きな部署を選定し、そこをボトルネックと仮定し、処理待ち部品を、スループット(利益の出る受注品)に関する仕掛かり(オーダー部品)と在庫部品等に分離する。
2 ボトルネック部署(資源)の能力を有効に使い切る スループットを支配するボトルネック資源の時間損失は、工場全体の時間損失となるので、納期未定のものの処理は時間損失になる。このため、納期を守り、早めるために必要な部品を優先処理する。 (補足:能力不足状態では、不急部品の製造は利益損失の原因、悪と見なす。) ボトルネック資源が遊ばないよう、着手待ちオーダー部品をバッファとして保つ。このバッファサイズは、ボトルネックでのリードタイム、前工程の出力変動を考慮して概算する。前工程の能力余裕が減少したら、異常回復能力の減少を補完するため、バッファを拡大する。 非ボトルネックは必要以上に使わない。オーダー品のリードタイムに着眼。
リードタイムの短縮は、顧客獲得に有効。
3 ボトルネック資源の能力の改善(=スループットの改善) 外注を含め、他の手段でできるものをボトルネックからオフロードする。費用を要するオフロード対策の評価は、ボトルネック単体のコストでなく、スループットと工場全体費用について、施策の実施前後を比較して判断する。ボトルネックの移動がないか同様手順で見直す。
4 非ボトルネックでの待ちを削減 オーダー品に対するリードタイムを短縮するには、リードタイムに影響しているワークセンター(非ボトルネック)での待ちも減らす必要がある。このため、次の2つの方法を採用する。 @オーダー品に直接関係しない部品製造を控える。 (在庫はその時点で利益を生み出さない)。 Aロットサイズを小さくする。 これにより、ロットに対するリードタイムを短くし、待ち時間を短くする。(非ボトルネック単体の効率に捉われず、リードタイムを短縮。)
5 スループットに関与する非ボトルネック部署(CCR)での着手時期の適正化 ボトルネック部品を優先しすぎると、後続工程のCCRで必要オーダー部品の欠品が発生する場合がある。これによるCCRでの着手開始遅れでリードタイムを増やさないように、CCRへのオーダー部品の到着時期を適切化する。 @ボトルネック部署のバッファへ到着するまでに掛かる時間と、待ち時間、処理時間を概算する。 Aボトルネックの出力部品が後続工程のCCRへ到着する時刻を概算し、CCR夫々の着手時期を決め、この時刻に必要部品が揃うように、夫々の部署での開始時刻を制御。欠品防止のため、適切なバッファをCCRにも確保。
6 出荷単位を小さくし、出荷待ち時間を短く 顧客を含めて、出荷小口化による経費増と出荷待ち(保管・保留)による損失とのトレードオフを判断。
<2011年6月15日追記> 「エリヤフ・ゴールドラット博士が2011年6月11日正午、イスラエルのご自宅でご逝去された(享年64歳)」との訃報に接し、心よりご冥福を申し上げます。 |